Macの日本語入力のおすすめは?数ヶ月使い込んで考えた(Apple日本語IM・ATOK・Google日本語入力)

2014/11/01

MacでもWindowsでも、一番よく使うソフトウエアは日本語入力・かな漢字変換プログラム(IME)ではないでしょうか。

文字入力・文章の作成は作業している時間が長いし、日々大量に入力するなら変換精度が良いものを使いたいと思いますよね。

Macの日本語入力ソフトウエアとして代表的な三つについて、コラムや書籍の原稿など正確な言葉遣いをする必要がある長文作成の仕事をしつつ、数ヶ月ずつ使い込んでみての評価やオススメについて紹介します。

Mac の 日本語入力選びは悩ましい

かな漢字変換プログラム(IME)にはほぼ毎日お世話になるわけでして、日本語変換の自分との相性の良さとか使い勝手の良さとかとても重要ですね。

ただ、短期間使ってみただけでは判らない良さやダメさもありまして、ちょこっと使ってみての比較レビューとか、日常生活で使うことのないような誤変換しやすい文章を入力してのベンチマークテストとか、あんまり役に立たなかったりすると思うんですね。自分にとってはそうでした。

それで、Google 日本語入力・ATOK(Passport版)・ことえり(Yosemite以降は新規変換エンジンの「macOS日本語入力」)をそれぞれ数ヶ月という単位で使ってみて、自分なりに感じたことやオススメのポイントを書いてみたいと思います。

Google 日本語入力: 新語に強い膨大な語彙が魅力

google-im

長所

無料で利用可能なのに変換が賢い、ATOKに引けをとらない変換精度、時事ネタや人名に強いといった特徴があって多くの人に大絶賛された日本語入力プログラムで、macOS ユーザーの間でも利用者が多いと思います。

僕もリアルタイム変換候補表示機能が気に入って、ATOKから乗り換えて半年近く使っていました。文字を入力するごとに変換候補が表示されるのは便利なのはもちろん、タイプミスがあった時には変な候補が表示されるので入力の間違いに気づきやすいというメリットがあります。

何より、検索エンジンが作る膨大な単語辞書が強力です。

短所

しかし、使い込むにつれてダメになっていくんですよ。なんというか、じわじわとバカになっていく。2万字くらいの原稿を書く仕事を幾つかしていたのですが、後になるほど誤変換が増えていくという感じ。感覚的な話でしかないんですが、原稿を読み返すと誤字に気付く回数が後になるほど増えていった印象。こういうのはATOKを使っていた頃にはなかったことですね。

使い始めた初期の頃は「変換精度すげー」とか思って、もうATOK終わったじゃんとか言って乗り換えたのですが、使い込むほど馴染んでいくATOKにはやはり遠く及ばないという印象に変わりました。

時々学習辞書をリセットしあげて、小まめに単語登録をしていけば良くなっていくらしいんですけど、その手間を惜しまないならことえり(macOS日本語入力)の方がいいですよ。ユーザー辞書を複数のデバイス間で同期する機能もないし。

メールを書いたりブログを書いたりと、ライトな文章書きに使うのなら全く問題ないと思いますが、書籍の原稿作成とか本格的に「文章を書くという仕事」をし始めると残念なところが目立ち始めます。そしてだんだんとストレスを感じるようになっていく…

ATOK: 正しい日本語を書くならこれ

atok

長所

やはり長年かけて鍛えられてきた日本語入力プログラムですね。使い込むほどに馴染んでいくのはさすがです。

ややお節介な感じもしなくはないですが、“正しい”日本語を使うように注告してくれるのも、ありがたい機能ではあります。敬語や献上語を使う際、耳にした覚えがあるからといって使っていると、実は日本語として正しくないということも教えてくれます。色々と勉強になるなぁと、日本語入力について謙虚に学ぶ姿勢で向かい合うとすごくいいソフトですよね。

リアルタイムに変換候補が表示されていく機能に慣れてしまうと、ATOKにはこれがないのがとても残念に感じます(改善されました。追記参照)。日本語入力プログラムとして欠点というほどの事ではないのですが、変な漢字が表示されたら強烈に違和感を感じて、誤入力があったんだと一発で気付けますので、タイプミスを減らすには最強の機能ではないかと思います。欠点というほどではないにしても、他の日本語入力プログラムと比べてちょっと物足りない部分です。

とは言っても、ATOKにはタイプミスを補正する機能があって、これがかなり優秀です。他の二つの日本語入力ソフトでは、そのままカタカナに変換されるような間違いをATOKは補正して、ユーザーが意図した言葉にしてくれる機能はかなり賢いです。

長く使っていくほどにいい感じになっていきますので、文章を書く仕事をしている人たちがATOKから離れられないという気持ちが理解できますね。

短所

ATOKの唯一の欠点が有料だということだけではないかと。ただ、かな漢字変換や漢字の選択にあまり注意を払わなくて良いので、日本語入力と文章作成に脳を専念させることができて、自分の時間と労力を節約できることを含めて考えたら、ATOK Passport の料金・毎月300円(年間で計算すると3,600円)なら払い続ける価値は十分あると思いますね。

Google 日本語入力を使い始めた当初は、もうATOKはいらねぇなと思ってパスボートを解約したんですが、半年ほど使ってみて結局ATOKに戻りました。

【2015.9.3追記】
ATOK2015 をしばらく使っていますが、なかなか良いですね。
予測変換候補の表示が改善されて、Google日本語入力のリアルタイム変換候補の表示とほぼ同等になりました。以前は最初の単語しか予測変換されなくて、入力を続けていくとひらがなだけになっていましたが、2015以降では後ろの方の言葉も予測変換で候補が表示されます。これは使っていて心地良いです。

変換精度については、2014は他の入力プログラムと比べて特別優秀という印象はなかったのですが、2015以降は流石という感じがします。頭ひとつ抜き出たという感じになったのではないでしょうか。

ことえり改め macOS日本語入力: じっくり育てると最強

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長所

Macに標準で搭載されている日本語入力プログラムはかつて、ことえり(漢字で書くと「言選り」)という風情のある名前でした。それが、Yosemite以降のMac OS Xに搭載されている日本語入力プログラムは「ことえり」ではなくMeCabベースの「日本語IM」に変更になりました。味気ない名前になってしまったのは残念ですね。

ことえりは日本語入力プログラムとしてバカの代名詞のように思われがちでしたが、プログラム自体は実はとても良くできていて、予め用意されている日本語辞書がしょぼいだけだったんです。こまめに単語登録をする労力を惜しまないで、しっかりとユーザー辞書を鍛えていけば、自分にとって最高の日本語入力プログラムに成長していきます。これ、間違いない。

実際に、シェエウエアにはなりますが山葵辞書の様な強化辞書を導入すると、見違えるほど変換効率が良くなりました。
(追記: 現行のmacOS日本語入力では、山葵辞書は使えません。)

そして、Yosemite から搭載されたことえり改め「macOS日本語入力」は、変換エンジン自体が大幅に強化された上に Google 日本語入力を凌駕するリアルタイム変換候補表示の機能が搭載されて、便利さでも最上級になりました。変換エンジンも MeCab (めかぶ)という形状素解析エンジンがベースになっていて、これについても Google 日本語入力と同様のもの。その後、ライブ変換機能を搭載して、文章を書く・日本語入力を行うという動作の使い心地に革命を起こしました。

変換・確定した単語の学習に関しても、以前のことえりと比較してぐっと高性能になっている印象です。使い込んでいくと、いつの間にか自分の好みに合う変換に洗練されていくように感じます。使い始めの初期段階だと、まだ手に馴染む感じではなくてATOKにはかなわないという印象を受けますが、しばらく使っているうちにしっくりくるようになります。あまりにも違和感なくスムーズに入力できるようになりすぎて意識されなくなっちまいがちですが、この“ユーザーに存在を意識されないくらいに馴染む”というのは実は凄い性能ではないかと思います。

ただ、一発で変換できなかった時、スペースキーを連打するか「control + n」で目的の漢字を探していくことになりますが、macOS日本語入力では「なんでやねんっ!」と華麗に突っ込みたくなるくらい使用される頻度を無視した順番で文字が出てくるのにはイラッとしますね。ATOKはこの辺まで丁寧に作りこまれていて素晴らしい。Google日本語入力もmacOS日本語入力よりは良いですね。また、かっこを変換する時には、ATOKなら左側を変換すると右側もそれに合ったものが一発で候補の最上位に表示される賢さがありますが、macOS日本語入力は右側も一から変換候補を探し直す必要があります。この辺は ATOK に一日の長があるというか、有料ソフトならではの気配りというか、一味違うと感じさせられる部分ですね。

ただ、その差を許せるくらい、macOS日本語入力のリアルタイム変換候補表示機能・ライブ変換機能はありがたいですね。動作が高速でスムーズだし、ミスタイプがあった時には変な漢字が表示されてすぐに気づけますので、トータルで見ると誤変換を減らして入力間違いの少ない文章を書くことができます。長い文章を書く仕事をしている時には、「賢い変換」よりも重要な機能かもしれないと思いました。どんなに優秀な日本語入力ソフトを使っていても、入力の間違いは起こりますし、読み返しても自分で書いた文章の間違いや誤変換にはなかなか気づけなかったりしますけど、リアルタイム変換候補・ライブ変換は間違いを減らすことにとても貢献します。

iPhone ユーザーなら、ユーザー辞書が iCloud 経由で同期されるという便利さもありますね。Mac で日本語入力の辞書を鍛えるほど、iPhone や iPad の日本語入力も快適になっていくんですから、ありがたいですよ。反対に、iPhone や iPad で文章を書いていて変換できなかった言葉を辞書に登録すれば、Mac の方にも自動で反映されているのが嬉しいです。もう文章作成の作業環境を選びません。

【2020/12/12追記】

Apple日本語入力でも、随時語彙の強化が行われているみたいです。いつの間にか鬼滅の刃のキャラクター名を変換できるようになっていました。

竈門炭治郎とか、途中まで入力すると予測変換の候補として出てきますよ。
猗窩座
煉獄杏寿郎
産屋敷耀哉
全部一発変換です。素晴らしい。

この語彙の追加はMacでもiPhoneでも同様に行われているようです。

短所

とはいっても、iCloud で同期されるのはユーザーが登録した単語だけ。変換・確定によって自動学習した内容は同期されません。この自動学習機能によって自分の手に馴染んできた変換が、別のMacを使い始めた途端にリセットされるのはなんとも残念な感じがします。
変な学習をしてしまったものが、所有するすべてのMacに取り込まれてしまわないようにということなのかもしれませんが、その部分も同期するかどうかくらいならユーザーに選ばせてもいいんじゃないでしょうかねぇ。だって、文章書きに愛用したMacだって、いつかは買い換える時が来るんだし、その時にまた学習がリセットされるのは残念だなぁ。

【2015.10.10追記】
MacOS XがEl Capitanになって、macOS日本語入力に自動変換機能が搭載されました。文章をだーっと書き続けていると、前後の文脈を考慮して自動で漢字に変換してくれます。スペースキーを押して変換するという操作や、リターンキーを押して確定するという操作がほとんど要らなくなります。かな漢字変換の精度自体はATOKに一歩譲る印象ですが、それでも十分な変換効率です。

Mac用日本語入力の便利機能を比較

日本語入力はかな漢字変換だけではありません。日本語入力をサポートする便利機能について比較してみましょう。

日付変換支援

「きょう」「きのう」「あした」といった入力をすると、いろんな日付の表記が変換候補として表示されます。

これはmacOS日本語入力が最も種類が豊富で、使い勝手がいいかなと思いました。

「ことし」「らいねん」「さらいねん」「さくねん」「きょねん」なんかも同様に、macOS日本語入力が便利ですね。

時刻変換支援

ATOKとGoogle日本語入力では、「いま」と入力すると現在の時刻に変換することができますが、macOS日本語入力ではこの機能がありません。

その代わり、macOS日本語入力では「1154」のように四桁の数字を入力すると、「11:54」「11時54分」という感じに、時刻に変換することができます。

郵便番号変換支援

郵便番号の数字を入力するだけで、住所に変換してくれる機能です。macOS日本語入力では、「1234567」と7桁の数字を入力するだけで

〒1234-567 住所

という形に変換してくれます。素晴らしい。

ATOKとGoogle日本語入力では、「1234−567」という感じにハイフンを入れて郵便番号を入力する必要がありますし、変換結果に郵便番号が含まれなくて住所だけになります。

この点についてはmacOS日本語入力が最も便利です。

記号変換支援

キーボードに刻印がなくて入力できない記号は、名前を知っていれば変換すれば良いのですが、名前を知らない記号もたくさんあって困ることもあります。

「きごう」という入力して変換候補として表示されるものについては、macOS日本語入力・ATOK・Google日本語入力のどれも同等で、順番の違いがある程度の差ですかね。

ATOKならではの便利機能

タイプミス補正

ATOKのウェブページに書いてあるとおり、「こみにゅけーしょん」といった誤入力をしても、「コミュニケーション」と修正してくれます。その他、長音「ー」を二回入力してしまったとか、ちょっとした入力ミスをしっかり補正してくれます。

macOS日本語入力とかGoogle日本語入力では、そのままカタカナに変換されてしまいます。読み返しても自分で書いた文章の誤入力は気が付きにくいので、正しい日本語を書くためにはありがたい機能です。

なんとか変換

「なんとか温泉」みたいに、曖昧な言葉で入力しても推測して候補を出してくれます。最初はなんの意味があるの?って思ったんですけど、実際に必要になった時にはありがてぇ!と思う機能ですね。

Google日本語入力の便利機能

オフラインで使える辞書の登録単語が豊富

機能というわけではないですけど、人名や製品名など、登録されている単語がものすごく豊富です。しかも、それらが全部メインの辞書に登録されていて、オフラインで使えます。

ATOKも同じくらい豊富な単語が使えますが、それはオンラインで外部の辞書を参照できる場合だけ。オフラインになっていると、macOS日本語入力と同じくらいに減ってしまいます。

この辺がGoogle日本語入力は時事ネタに強いと言われる理由ですね。

macOS日本語入力の便利機能

ライブ変換

なんといってもライブ変換機能ですね。ユーザー辞書をしっかり鍛えていけば、スペースキーやリターンキーを押すことがほとんど無くなると思います。自分がそうなので。

ひたすら文章を入力し続けたら、自分が意図した通りの漢字仮名交じり文章に変換されているので、日本語入力の負担が極少になります。macOS日本語入力+親指シフトだと、指で喋っているような感覚です。

Macの日本語入力を徹底比較しておすすめは

日本語入力の良し悪しは好みの問題が多々ある話ではありますが、ブログ記事の作成とか日常的な文章作成くらいならどれを選んでも大差ないと思います。

長期間使い続けて、大量に文章を作成することを考えたら、無料でしかもOSとの相性問題の心配もない macOS日本語入力 を、コツコツとユーザー辞書を鍛えながら使い込んでいくのがベストだと思います。

ユーザー辞書を鍛える最速の方法は、iPhoneを使うのが簡単です。

あんまり手間をかけずに高精度な変換をして欲しいと思うのであれば、ATOKがいいと思います。有料ではありますが、金額に見合うどころか、それ以上の効果を得られるはずです。また、MacとWindowsとiPhoneとAndroidを使い分けるとか、頻繁にMac・Win間とかiPhone・Android間で作業環境を乗り換えるという使い方をする(ちょっと特殊な)人の場合は、ATOK Passportでユーザー辞書を同期するという環境が良いでしょう。

Google 日本語入力は僕には合いませんでしたし、macOS日本語入力にリアルタイム変換候補表示機能が搭載されてすっかりお役御免です。

いずれにしろ、使ってみて自分と相性がいいものを選んで、じっくりと使い込んでいくのがいいのだなと改めて思いました。

この記事を公開してから8か月ほど経過した時点で加筆や修正をしましたが、その間に使い続けていてすっかり手に馴染んでいるmacOS日本語入力が気に入っています。ユーザー辞書もかなり鍛えられていて、自分の好みに合った変換になっています。ライブ変換機能のおかげで、変換とか確定の操作をほとんどする必要なく、一気に文章を入力していくだけで日本語入力が完了します。誤変換も滅多になくなりましたねぇ。ここまで来てしまうと、なんかもうATOKには戻れないかなぁ… ライブ変換+しっかり鍛えたユーザー辞書+使い込んだ自動学習は最強かも。

【2019.08.11追記】
iOS・iPadOS で使えるサードパーティ製の日本語入力の多くが、純正のユーザー辞書を参照するようになっているので、おそらく唯一それができない日本語入力ソフトであるATOKを使う必要性が、かなり小さくなっています。
そういう訳で、macOS日本語入力を使い続けています。ライブ変換が便利すぎる!