iPhoneは売れているのか売れていないのか

2008/09/05

iPhone の販売に関して、9月4日に対照的な2種類の報道がありました。

まず、TechCrunch Japaneseでは、世界的に iPhone は良く売れていて、2ヶ月で600万台販売したそうです。そして、毎週80万台も販売が続いているそうです。いずれは、Symbianを追い越すかもしれないとまでしています。といっても、あくまでも世界的な視野での話で、日本のことには触れていません。

それじゃ、日本ではどうかというと、(低俗すぎて話題に出すべきか迷いましたが)Fuji Sankei Business iによると、 iPhone は2ヶ月で20万台しか売れてなくて「アップル“敗戦”」なんだそうです。そして、よりによって(販売台数も示さずに)docomoのブラックベリーが売れてるときたもんだ。

引用1
日本では100万台売れる-との予測もあったアイフォーンに、もはや当初の勢いはない。アップルとソフトバンクは販売実績を極秘にしているが、通信業界に詳しいUBS証券の乾牧夫シニアアナリストは「20万台前後で止まっている感がある」と推測。年内販売は控えめに35万台程度と見積もっていたが、それにも及ばない情勢という。

引用2
ドコモは2006年9月、法人専用サービスとしてブラックベリーの英語版を発売し、外資系企業などが導入。昨年7月には日本語版も投入した。さらに今年8月に個人でも契約できるようにし、9月からは割安な通信料金プランも設定、利用のすそ野を広げつつある。

日本のマスコミにありがちな、持ち上げたものはたたき落として徹底的にバッシングすることで玄人ぶるというやつですね。2ヶ月で20万台、半年で35万台なら、ケータイとしても普通以上の売れ行きだし、スマートフォンとしては大ヒットというんじゃないでしょうか。

で、激しく気になったんですけど、誰が iPhone は日本で年内に100万台も売れると予想してましたっけ?具体的な数字としてあげられていたのは、ソフトバンクが7月〜9月の販売分として40万台の iPhone を確保したということだけだったはずです。
そんなときには検索です。そして検索結果を見たら大爆笑!

【iPhone,私はこう見る】需要は“ボジョレーヌーボー”,革命ではない: 乾 牧夫 シニア アナリスト

たくさん売れるか疑問だが,広告宣伝の効果はあるだろう。売れても100万台。iモードの5000万台と比べるまでもない。FeliCaやカメラみたいな機能は革命だった。ただし,メーカーが主導権を握って通信事業者が動くという点では今までと違う。

本人ぢゃねーか!!

100万台という予想数字の出所なのに、素知らぬ顔で今は「控えめに35万台と見積もっていた」と、発言を完全にひっくり返してます。しかも、docomoの契約総数(1台のケータイに番号が二つの2in1は2契約とカウントして)が5,000万台であって、iモード付き携帯の今年の販売数ではないので、今年末までの販売予想台数とする iPhone の100万台との比較は意味不明です。スゴい人なんですね、UBS証券 株式調査部 マネージング ディレクター,UBSインベストメント・リサーチ 乾 牧夫 シニア アナリストさんって。

個人的にはどんな人物なのか全く存じ上げませんが、これだけコロッと発言内容を変える人の話は当てにならんと思うのが普通の感覚ではないでしょうか。


そして、問題のFuji Sankei Business iの記事中ブラックベリーの写真の右にあるバナーとそのリンク先にあるFuji Sankei Business iの記事にも注目です。この時点でマトモな記事でもマトモな分析でもないことが明白です。

訂正: 読み返してみると、【iPhone,私はこう見る】の中で乾さんは「年末までに」とは言ってないですね。「売れても100万台」の意味が、数年間にわたるトータルでの販売台数だとしたら、全く意味が違ってきますので、“100万台の出所”というのは僕の早とちりだったようです。乾さんには大変失礼をいたしました。このブログ程度で名誉に傷がつくということも無かろうと思いますが、申し訳ありませんでした(この記事にリンクされている方は、訂正部分も取り上げていただけるとありがたいです)。ただ、Fuji Sankei Businessの記事中でiPhoneについて

乾氏は「新しい提案のある製品だが、日本向けに手直しせず発売した点で市場を見誤っていた。一定のヒットはしたが、戦後処理も必要な段階だ」とアイフォーン商戦を総括。携帯が電話とメール機能にとどまっていた欧米と異なり、「日本はすでにネット閲覧や音楽再生機能を盛り込んでいる。アイフォーンの新規性は薄い」と市場環境の相違を指摘した。

ともありますので、記事どおりの発言をされているとしたら、乾さんの真意は測りかねます。まだ発売から2ヶ月足らずで、“敗戦”とか“戦後処理”という刺激的な言葉をあえて使って総括するのはあまりにも穏やかではないと思いますし、早計すぎると思いますし、悪意にも取れます。また、あえて言えば、iPhoneが日本的“ケータイ”とは違うということ、OSのバージョンアップで機能の追加や改善が行われていくこと、様々なアプリや専用コンテンツやサービスが登場することなど、今後iPhoneの魅力はタッチパネルや斬新な操作系ではなく別の部分にあることが理解されて徐々に浸透していくことで、現在の販売シェアを長期間維持する可能性や、延びていく可能性もあるので、短期的に判断できる商品ではないのは明白です。乾さんは、iPhoneの商品価値を完全に見誤っていると思います。

[追記 09.07.16: 参考記事]
「iPhone」発売から1年、まだまだ売れてる「iPhone 3G」と好調なスタートの「3GS」

他の方の【iPhone,私はこう見る】も合わせてご覧ください。

【iPhone,私はこう見る】一般向けには通信料が障壁,販売数は孫社長次第
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【iPhone,私はこう見る】類似品ではiPhoneの設計思想に追いつけない
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追記: ケータイWatch+D Mobile の記事によると、携帯電話8月契約数は、NTTドコモ 8万4400増 累計5380万7200(51.5%)、KDDI 5万4900増 累計3037万6900(29.1%)、ソフトバンク 16万3300増 累計1949万400(18.7%)、イー・モバイル 8万4300増 累計75万2400(0.7%)、携帯総計 38万7000増 累計1億442万6900、ということで、SoftBankが16ヶ月連続で純増1位だそうです。また、MNPの利用については、NTTドコモ 4万3700減、au 9800増、ソフトバンク 3万3600増、イー・モバイル 300増となっています。iPhoneが理由かどうかは解りませんが、docomoからSoftBankにかなり移動してますね。

追記: こちらもどうぞ
iPhoneバッシング?にもの申す : ITmedia Alternative blog
iPhoneは“失敗”してないって